十五代酒井田柿右衛門Sakaida Kakiemon XV
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ギャラリー一番館
からのご紹介 - 陶歴・プロフィール
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十五代 酒井田柿右衛門は、有田焼の中でもとりわけ高度な技術を要する色絵磁器の伝統を受け継ぐ陶芸家です。
柿右衛門窯は、重要無形文化財「色絵磁器」の保持団体として認定されており、十五代は現在、その当主として作陶にあたっています。江戸時代初期に確立された柿右衛門様式は、日本の磁器文化を代表する表現の一つとして国内外で知られてきました。
十五代は、その長い歴史の延長線上に立ちながらも、現代の感覚と向き合い、自身の作家性を模索し続けています。有田焼の歴史的背景・世界に通じる柿右衛門という存在
柿右衛門様式は、17世紀に初代酒井田柿右衛門によって確立された赤絵磁器の様式です。
乳白色の素地に、余白を活かした構図と鮮やかな赤絵を配する表現は、当時の日本磁器としては画期的なものでした。この様式は、オランダ東インド会社を通じてヨーロッパへ輸出され、ドイツのマイセンをはじめとする西洋陶磁に大きな影響を与えたことでも知られています。
また、江戸時代の輸出史により、ヨーロッパの王侯貴族に愛好され、西洋陶磁の形成にも影響を与えた背景があります。
現在、当時のように大量輸出が行われているわけではありませんが、「Kakiemon」は単なる個人名ではなく、有田焼や伊万里焼という枠を超え様式名として国際的に認識される存在となりました。濁手技法と色絵磁器の本質
柿右衛門様式を語るうえで欠かせないのが、濁手(にごしで)と呼ばれる素地です。
濁手は、複数の陶石を調合し、高度な焼成管理によって生まれる乳白色の地肌で、一般的な白磁とは異なる柔らかな表情を持ちます。この素地は焼成時の歩留まりが低く、制作には高い技術力と経験が求められます。
そのため、濁手作品は技術的な完成度そのものが価値の指標ともなり、有田焼の中でも特別な位置づけにあります。十五代 酒井田柿右衛門は、この濁手技法を基盤としながら赤絵磁器の色使いや構図において、従来の様式にとらわれすぎない表現も試みています。
十五代酒井田柿右衛門の作風と現代的評価
十五代の作品は、伝統的な柿右衛門様式を踏まえつつも、図案や余白の取り方、色の分量に変化が見られます。
赤絵をあえて用いない作品や、従来よりも大胆な構成の絵付けなど、作家としての模索が随所に感じられます。こうした姿勢は、
「伝統を守るだけでなく、時代に合わせて更新していく存在」
として、工芸関係者やコレクターから評価されてきました。作品は日本伝統工芸展をはじめとする公的な場で発表されており、日本工芸会正会員としての活動も含め、第三者的評価の裏付けを持っています。
また、濁手作品を中心に高価格帯で取引される例もあり、有田焼の可能性を現在進行形で示す作家の一人といえるでしょう。当店で取り扱っている十五代作品の特徴
当店で取り扱っている十五代 酒井田柿右衛門の作品には、襲名後の作風の変化がはっきりと表れています。
十三代・十四代の作品と比べると、図柄や絵付けの印象が異なり、全体としてより現代的な雰囲気を感じさせます。梅の意匠など、伝統的なモチーフを用いながらも、色味や配置には違いがあり、単なる踏襲ではないことが見て取れます。
徳利に見られる大胆な絵付けも、その一例です。柿右衛門様式の特徴である「余白の美」は保たれつつも、あえて絵の分量を多く感じさせる構成がなされており、静と動のバランスが印象的です。
色絵磁器としての品位を保ちながら、十五代ならではの感覚が自然に反映されています。ギャラリー一番館と十五代酒井田柿右衛門
当店ギャラリー一番館では、肥前のやきものを代表する作家や窯元と長年にわたり関係を築いてきました。
十五代酒井田柿右衛門とは、「唐津くんち」をはじめとする唐津の行事にお見えになった折や、当店一番館・店主も参加している「陶芸散歩の会」などを通じて交流を重ねています。「陶芸散歩の会」は、十三代中里太郎右衛門をはじめ、鹿児島の鎮守関志保、有田の三右衛門系譜の作家、小石原の人間国宝・福島善三、中里太亀、さらに店主の推薦により矢野直人、竹花正弘といった作家も加わる、会派を超えた私的な勉強会で、陶芸家同士の情報交換や制作について率直に語り合うことができ、そうした場を通じて柿右衛門氏とも親しくお付き合いする関係が築かれています。
こうして培われた関係性は、作品理解の深さにもつながっており、単に作品を扱うだけでなくその背景や変化を見つめながら紹介できることは当店にとって大きな意味を持っています。
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【プロフィール】
生年 1968年
窯元 柿右衛門窯
師匠 父・十四代酒井田柿右衛門
【陶歴】
1968 佐賀県有田町に生まれる。
1991 多摩美術大学絵画学科(日本画専攻)入学(のち中退)。
1994 父・十四代酒井田柿右衛門に師事し、柿右衛門窯に入る。
2010 第45回西部伝統工芸展にて初入選。
第57回日本伝統工芸展にて初入選。
2012 有田陶芸協会会員となる。
2013 国・重要無形文化財保持団体「柿右衛門製陶技術保存会」会長に就任。
日本工芸会正会員となる。
2014 2月4日、十五代 酒井田柿右衛門を襲名。
佐賀県陶芸協会会員となる。
2019 日本陶芸美術協会会員となる。
現在 日本工芸会西部支部副幹事長、佐賀県陶芸協会副会長、
有田陶芸協会副会長、日本陶芸美術協会幹事として活動。