井上 祐希Yuki Inoue

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  • 陶歴・プロフィール
  • 人間国宝・井上萬二の系譜を受け継ぐ、井上萬二窯の次世代。
    白磁という極めて純度の高い世界に身を置きながら、現代の感覚と実験精神を持ち込み、静かにその表現領域を広げている陶芸家です。

    出会いと作家の歩み

    井上祐希は1988年、佐賀県有田町に生まれました。
    祖父は重要無形文化財「白磁」保持者(人間国宝)の井上萬二。父・井上康徳も陶芸に携わっていましたが、若くして他界しています。

    大学では陶芸ではなく、玉川大学芸術学部ビジュアルアーツ学科で現代美術・デザインを学びました。
    一度は陶芸の道とは距離を置いた進路を選びましたが、2012年、祖父・井上萬二に師事することを決意。井上萬二窯に入り、本格的に陶芸の世界へ足を踏み入れます。

    白磁の基礎からろくろ成形、焼成に至るまで、極めて厳格な環境のもとで修行を重ねてきました。

    祖父・井上萬二の教えと白磁の継承

    井上祐希の陶芸の根幹にあるのは、祖父・井上萬二から直接学んだ「白磁の考え方」です。

    白磁は、装飾で誤魔化しがきかない世界です。
    わずかな歪み、釉薬のムラ、形の甘さがすぐに露呈します。
    その制作現場を最も近い距離で見てきた環境が、井上祐希の陶芸観の根幹を形づくっているといえます。
    白磁の難しさと向き合う姿勢は、作家としての覚悟として作品にも表れています。

    祐希は、祖父の白磁を単に「踏襲する」のではなく、まず正面から受け止め、技術として体に叩き込むことを選びました。
    その上で、少しずつ自身の表現を模索しています。

    井上祐希の作品世界 ― 伝統と現代感覚の交差点―

    井上祐希の作品世界を特徴づけている要素のひとつが、白磁を基盤とした釉薬表現、なかでも「釉滴(ゆうてき)」と呼ばれる技法です。

    釉滴とは、釉薬を筆にたっぷりと含ませ、器の表面に滴下することで文様を生み出す表現方法です。釉の落ち方や広がり、焼成時の反応によって結果が大きく変わるため、同じ模様は二つとして生まれません。意図と偶然が交差するこの技法は、一点ごとに異なる表情を生み出し、作品に明確な個体差と唯一性を与えています。

    天目系の作品では、鉄分を含んだ釉薬が焼成によって銀斑や滴状の模様を生み、黒と銀の静かなコントラストが現れます。天目釉は、茶の湯文化と深く結びついた歴史的背景を持つ技法ですが、井上祐希の作品では、その重厚感に現代的なリズムが加えられ、日常使いの器としても成立する佇まいを備えています。

    この表現が成立している背景には、白磁という素材の特性があります。白磁は装飾によるごまかしがきかず、成形の精度や釉のわずかな変化までもがそのまま表に現れる素材です。その透明感と緊張感のある地肌の上に釉滴が加わることで、装飾性を持ちながらも過剰にならない、抑制の効いた表現が生まれています。

    評価と現在地 ― 次世代を担う存在として ―

    井上祐希は、西部伝統工芸展、日本伝統工芸展、有田国際陶磁展など、伝統工芸の主要公募展に継続して入選・入賞を重ねています。

    派手な評価や話題性ではなく、着実な実績の積み重ねによって、業界内での信頼を築いている作家です。

    若い作家でありながら、井上萬二窯という大きな系譜を背負う立場にあることは否定できませんが、その重圧から目を背けることなく制作を続けている点は、作品の佇まいや造形の緊張感にも表れており、着実に評価を積み重ねている理由のひとつとなっています。

    白磁という完成度の高い世界を継承しながら、そこに現代の感覚をどう重ねていくのか。
    井上祐希の歩みは、有田焼そのものの未来とも重なっています。

  • 【プロフィール】
    生年 1988年
    窯元 井上萬二窯
    師匠 井上萬二(祖父・人間国宝)

    【陶歴】
    1988 佐賀県有田町生まれ
    2011 玉川大学芸術学部ビジュアルアーツ学科卒業
    2012 4月より祖父・井上萬二に師事、陶芸の道に入る 佐賀県美術展 入選
    2013 陶美展 入選 西部伝統工芸展 入選 佐賀美術協会展 入賞
    2014 佐賀美術協会展 入賞 佐賀県美術展 入選
    2015 西部伝統工芸展 入選 陶美展 入選 佐賀美術協会展 美術協会賞(最高賞)
    2016 陶美展 入選 西部伝統工芸展 入賞(課題部門 入賞)
    2017 西部伝統工芸展 入選 有田国際陶芸展 入選 日本伝統工芸展 入選 陶美展 入選 2018 佐賀県美術展覧会 入選 有田国際陶芸展 入選
    2019 有田国際陶芸展 入選
    2020 日本伝統工芸展 入選 佐賀県美術展覧会 入選
    2021 佐賀新聞文化奨励賞 受賞
    2022 有田国際陶磁展 入選
    2023 西部伝統工芸展 入選 有田国際陶磁展 入選 日本陶磁協会現代陶芸奨励賞 九州・沖縄展 入選
    2024 西部伝統工芸展 入選
    2025 西部伝統工芸展 入選 有田国際陶磁展 入選