梶原 靖元

 【ギャラリーからの紹介】

 現在の唐津において、古唐津の復元にもっとも精力を傾けているのが梶原氏だと言われている。元来は粘土とされる古唐津の原料に砂岩を用い、十年の歳月をかけて「古唐津そのもの」と専門家に評されるほどの唐津を焼く。2001年以来、古唐津のルーツを求め韓国の古窯を数多く訪れその研究活動にも余念はない。

 梶原氏は唐津焼窯元で6年の修業の後、デザイン性のあるクラフト作品をめざし京都に向かう。その10年は様々なことを試し自分の理想の形を模索し現在の礎となった。その後、氏は唐津に戻り本格的な古唐津の再現に取り掛かるようになる。佐賀県東松浦郡北波多村大字帆柱字鮎帰の古窯、飯洞甕窯の近くに窯を構え、器を作る材料はすべてその付近で採れるものを使用する。飯洞甕窯は、歴史上初めて唐津に現れた最古の登窯である。

 素材感が他の唐津焼作家と明らかに異なる梶原氏は、まず、ほとんどの工程を、古唐津を作っていた陶工達に近づけるため、窯の場所の地理やその時代の焼き物の制作条件を研究し、限られた素材。限られた条件の元作陶続ける。素材は砂岩の塊を石臼で引き、細かい物だけを使う。釉薬は窯付近の草や藁が材料で、鉄絵に使う鬼板もこの付近のものである。窯は耐火煉瓦ではなく昔ながらの粘土で作っているので、窯の温度が1250度を超えると窯自体が壊れる。したがって、昔の陶工と同じく、低温かつ短時間で焼成をし、水簸され、絶妙な配分で挽かれた砂岩により漏れを防ぐのである。

 このベースとなる素材作りは多くの唐津の作家が試しているが、現在の梶原氏のようにはなかなかできないと度々話を聞く。その日の天候、砂岩の状態、釉薬とのバランスなど長年培ってきた氏の知識と経験が、梶原氏でしか作り出せない古唐津を可能にしているのである。

 近年では、「枯唐津」と命名された作品を発表しており、これは、今まで古唐津で使用されてきた素材とは異なる素材、砂岩を用い当時の製法をもって作られた器達である。いわゆる新唐津の誕生ともいえる器で、梶原氏らしい唐津ファンの心を掴むユニークな作品達である。様々な手法を用い、しかし一貫した古唐津への氏の解釈は多くの人から支持され、現在ではもっとも注目される唐津の作家の一人となった。

  

【陶歴】

  • 1962 佐賀県伊万里市に生まれる
  • 1980 有田工業高等学校 デザイン科卒
  • 1986 唐津焼窯元 太閤三ノ丸窯に弟子入
  • 1989 大丸北峰氏に師事し煎茶道具を習う
  • 1994 朝日現代クラフト 入選
  • 1995 現代茶陶展 入選
  • 1995 唐津市 和多田にて独立する
  • 1996 淡交社 茶道美術展「鬼子」入選
  • 1997 佐里 大谷に穴窯築窯
  • 2003 第100回 九州山口陶磁展 経済産業大臣賞受賞
  • 2003 韓国にて海外研修
  • 2004 韓国「古唐津のルーツを求めて」古窯跡視察 「古唐津研究会発足」
  • 2005 中国の地質巡検
  • 2005 NHK BS2「侘びの茶碗をよみがえらせたい」放映
  • 2007 陶芸散歩の会 会員展出品
  • 2007 NHK教育 「美の壺」出演
  • 2011 GALLERY一番館にて個展

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